【話題】竹中平蔵氏「正社員をなくせばいい」再び主張[26/10]

概要

竹中平蔵氏「正社員をなくせばいい」再び主張 日本の雇用は本当に“守られすぎ”なのか

経済学者で元総務相の竹中平蔵氏がXで、「正社員をなくせばいい」とする自身の考えを改めて説明し、議論を呼んでいる。

竹中氏は、非正規雇用の増加を自身の政策と結びつける批判に反論。働き手全体に占める派遣労働者は「わずか2~3%」だとしたうえで、問題の本質は派遣制度そのものではなく、正社員と非正規の間にある大きな格差、いわゆる「労働市場の二重構造」にあると主張した。

さらに、日本では正社員の解雇が難しいため、人件費が固定化し、企業が景気変動などに対応する際、非正規労働者を「調整弁」として利用する構造になっていると指摘。「正社員の既得権益」を見直すことが、結果的に非正規を含む働く人全体の待遇改善につながるとの考えを示している。

「派遣は2~3%」は概ね正しい。ただし非正規全体とは別

ここで注意したいのが「派遣」と「非正規」の違いだ。

竹中氏が示した「派遣は働き手の2~3%」という数字自体は、おおむね実態に沿ったものとみられる。

しかし、非正規雇用には派遣社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、嘱託なども含まれる。

総務省の労働力調査では、2025年10~12月期の役員を除く雇用者5,866万人のうち、非正規の職員・従業員は2,126万人。割合にすると約36%に達する。

したがって、

「派遣労働者は2~3%」と「非正規雇用が約36%」は矛盾しない。

竹中氏への批判を検証する場合、「派遣の増加」と「非正規全体の増加」を分けて考える必要がある。

「1979年からクビを切れなくなった」は少し単純化

竹中氏は今回、1979年の判例を、日本で正社員を解雇しにくくした転換点として挙げている。

これは最高裁の「高知放送事件」を指しているとみられる。

アナウンサーが寝過ごしによる放送事故を2回起こし、事実と異なる報告書も提出したことから会社が解雇した事件で、最高裁は、解雇事由があったとしても、具体的事情から著しく不合理で社会通念上相当と認められない解雇は「解雇権の濫用」として無効になり得るとの判断を示した。

この考え方はその後、現在の労働契約法16条につながっている。

ただし、これを「1979年から何があっても正社員をクビにできなくなった」と理解するのは正確ではない。

日本でも合理的な理由と社会的相当性が認められれば解雇は可能であり、問題は「解雇そのものが禁止されている」ことではなく、どこまでなら有効なのか企業側から予測しにくいことにある。

実はOECDも「二重構造」を長年問題視

一方、竹中氏の「正社員の強い雇用保護が非正規を調整弁にしている」という指摘には、一定の裏付けがある。

OECDは以前から日本の正規・非正規の「労働市場の二重構造」を問題視してきた。

2026年の対日経済審査でも、企業が非正規労働者を景気変動に対応する「ショックアブソーバー」として採用する背景の一つに正社員の雇用保障があると指摘。解雇をめぐる予見可能性を高めると同時に、失業した人への所得保障や再就職支援を充実させる必要があるとしている。

ただし、ここにも重要な点がある。

最新のOECD指標では、日本の正規雇用者に対する雇用保護の厳格さはOECD平均をわずかに下回る水準となっている。つまり「日本の正社員は世界でも異常なほど保護されている」という竹中氏の表現は、現在の国際比較ではそのまま裏付けられない。

OECDが問題視しているのは単純な「正社員の保護の強さ」だけではなく、正規と非正規の待遇、社会保障、教育訓練、雇用の安定性などに大きな差が存在することだ。

ネットでは「全員を不安定雇用にするのか」と反発も

今回の投稿をめぐっては、竹中氏の主張に対し、「正社員をなくせば非正規の待遇が上がるのではなく、正社員側の待遇が下がるのではないか」といった方向からの反発が起こりやすい。

実は、この議論は今回が初めてではない。

竹中氏は2015年1月の「朝まで生テレビ!」でも、

「同一労働同一賃金を実現するなら、正社員をなくしましょうと言わなければならない」

という趣旨の発言をして大きな議論になった。

当時もネットでは「全員が不安定な雇用になる」とする批判が出る一方、「正社員と非正規という身分差をなくすという意味なら合理的だ」と評価する意見もあり、賛否が分かれた。

竹中氏自身も2021年に、この過去の「正社員をなくせばいい」発言について改めて説明している。

つまり今回の投稿は新しい政策提言というより、竹中氏が10年以上にわたって主張してきた「正規・非正規という区分そのものを見直すべきだ」という考えを改めて打ち出したものといえる。

海外に「正社員をなくす」に近い前例はある?

参考になるのがデンマークの「フレキシキュリティ」と呼ばれる仕組みだ。

企業側には比較的柔軟な雇用調整を認める一方、失業した労働者には失業給付や職業訓練、再就職支援などを用意する。

つまり、

「今いる会社で絶対に雇用を守る」のではなく、「会社を失っても生活と次の仕事を守る」

という発想だ。

日本の労働政策研究・研修機構(JILPT)も、デンマークについて、経済的理由による解雇を比較的柔軟に認める代わりに、失業給付や職業訓練によって労働者を支えるモデルだと説明している。

ただし、「解雇しやすくした部分」だけを日本に導入すれば同じ結果になるわけではない。

手厚い失業時の保障、再教育、転職市場、労使交渉などを組み合わせて初めて成り立つ制度だからだ。

スペインでは逆方向の改革も

もう一つ興味深い前例がスペインだ。

スペインもかつて、安定した無期雇用と不安定な有期雇用が並存する「労働市場の二重構造」が大きな問題になっていた。

しかし2021年の労働改革では、正規側を不安定化させるのではなく、有期雇用を使える場面を制限し、無期雇用を増やす方向へ改革した。

その結果、有期契約の割合は2021年末の21%から2023年初めには15%未満まで低下。OECDによると、その間、雇用全体が減ったわけではなく、無期契約の増加が有期契約の減少を上回った。

つまり、二重構造を解消する方法は一つではない。

正社員側の保護を弱めて中間に近づける方法もあれば、非正規側の安定性を高めて中間に近づける方法もある。

問題は「正社員をなくす」の中身

竹中氏が指摘する「正規と非正規の二重構造」自体は、OECDも長年、日本の労働市場の課題として指摘してきた。

一方で、「正社員をなくす」という言葉だけでは、改革後の姿は見えてこない。

解雇しやすくする代わりに失業給付や職業訓練を充実させるのか。

非正規の賃金や社会保険を正社員並みに引き上げるのか。

それとも正社員の雇用保障や待遇を非正規側へ近づけるのか。

同じ「正規・非正規の格差解消」でも、その方法によって働く人への影響は大きく異なる。

竹中氏の今回の投稿が投げかけている本質的な論点は、「正社員を守るか、なくすか」という二者択一よりも、企業ではなく働く人そのものを、失業や転職時も含めてどのように守る労働市場を作るのかという問題なのかもしれない。

編集部[26/10/07]

Xより

引用元:https://x.com/HeizoTakenaka/status/2107788471507014141?s=20
https://x.com/i/trending/2107820441091838156?s=20

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