
概要
2026年10月31日夜、スイス最大の都市チューリヒで、数百人が参加する無許可のデモが暴動に発展した。
参加者の一部は道路にバリケードを築いて放火し、警察官に向けて石や瓶、花火を投げつけた。警察は放水車や催涙ガス、ゴム弾を使って対応した。
同じ夜にはスイス北部のバーゼルでも約150人によるデモが行われ、一部で放火や器物損壊が発生した。
今回の騒動は、フランスなど欧州各国で続く若者の抗議活動に呼応したものとみられている。
■ ハロウィンの夜、繁華街が騒然
チューリヒ市警察によると、10月31日午後10時30分ごろ、繁華街ラングシュトラーセのピアッツァ・チェラ付近に数百人が集まった。
当日はハロウィンということもあり、参加者の中には仮装姿やマスクを着用した人もいた。
午後11時ごろ、集団はヘルヴェティア広場方面へ移動。その途中でゴミ収集用コンテナを道路に並べ、火を放つ行為が始まった。
さらに暴動は周辺の道路へ広がり、電動自転車や電動キックボード、乗用車なども放火された。
近隣の商店や公共交通機関の停留所では窓ガラスが割られる被害も発生した。
警察が放水車で集団を押し戻そうとすると、参加者の一部は花火や石、ガラス瓶を投げつけて抵抗した。
警察は催涙ガスやゴム弾も使用し、現場の鎮圧にあたった。
騒動は翌11月1日午前1時30分ごろまで続いた。
■ 負傷した少年への救助活動まで妨害
今回の暴動では、救助活動に支障が出る事態も発生した。
深夜0時過ぎ、事故で脚に重傷を負った10代の少年を救助するため、警察のパトカーが現場へ向かった。
しかし、その途中で集団に襲撃され、パトカーが損傷。警察官は一時撤退を余儀なくされた。
これにより、少年への救助活動が遅れる事態となった。
チューリヒ州警察は暴動に関連して19歳と21歳のスイス人男性2人を逮捕した。
2人は工事現場で警察への投てきに使用する可能性のある物を集めていた疑いがあり、覆面用具や武器も所持していたという。
このほか、18件の退去命令が出されている。
■ デモの目的は社会的不平等への抗議
今回のデモは、極左系グループの呼びかけによって計画された。
現地メディアによると、主催側はインターネット上で、社会的不平等や家賃の高騰、医療保険料の上昇、国家の再軍備などを批判していた。
また、欧州各国で広がる若者の抗議活動への連帯も訴えていた。
特にフランスで起きた抗議活動や暴動に影響を受けたとみられ、SNSでは燃える建物の映像を用いた参加呼びかけも行われていた。
一方、主催側の呼びかけには、窓ガラスの破壊を社会的不平等への抵抗として肯定的に扱う内容も含まれていた。
実際のデモでは政治的主張を示す横断幕がほとんど見られず、現地メディアは、参加者の中には政治的な目的よりも暴動そのものを目的とした人々がいた可能性を指摘している。
■ バーゼルでも約150人がデモ、公共交通機関が停止
同じ10月31日夜、スイス北部のバーゼルでも無許可のデモが行われた。
バーゼル州警察によると、午後9時ごろ、約150人がクララ広場に集まり、市内中心部を行進した。
参加者らは演説を行いながら移動し、道路を占拠したことで路面電車などの運行が一時停止した。
午後10時30分ごろには、ザンクト・ヨハン広場でゴミ箱や金属製の柵を使ったバリケードが築かれ、放火された。
警察が介入すると参加者らは公園方向へ逃走し、消防隊が消火活動にあたった。
デモの経路では一部で器物損壊も確認されている。
■ SNSでは過激な呼びかけ、政治家からは非難
今回のデモでは、SNSが参加者の動員に利用された。
現地公共放送SRFによると、デモに関連するInstagramアカウントでは、フランスの暴動映像を使いながら抗議行動の拡大を呼びかけていた。
「闘争を激化させろ」という趣旨の英語メッセージや、「チューリヒが燃え、私たちは踊る」という内容の投稿も確認されている。
一方、事件後には現地の政治家や政党から暴力を非難する声明が相次いだ。
チューリヒ市の社会民主党は暴力と破壊行為を強く非難し、緑の党も、正当な要求を掲げる若者の抗議活動が一部の暴力行為によって利用されていると批判した。
右派の国民党(SVP)は警察の対応が消極的だったと主張し、警察官の増員を要求している。
SNS上では過激な抗議行動を支持する発信が確認されているものの、一般利用者の賛否の割合や、日本国内でどの程度反応が広がっているかについては、信頼できる集計が確認できていない。
■ 被害総額は調査中、過去にも大規模な騒動
チューリヒ市警察は11月1日の発表で、今回の暴動による被害総額について、まだ算定できていないと説明している。
なお、チューリヒでは10月10日から11日にかけても、ハルト広場付近の無許可のパーティーをめぐって警察との衝突が発生した。
この別の事件では、警察車両などが大きな被害を受け、損害額は数十万スイスフランに達したと発表されている。
今回の10月31日の暴動と混同しないよう注意が必要だ。
■ 欧州の社会的不満と暴力行為の境界
今回の暴動は、物価高騰や社会的不平等、政府の政策に不満を抱く若者たちの抗議活動が、欧州各地で広がっている状況を背景としている。
ただし、政治的な要求を掲げることと、放火や器物損壊、警察官への攻撃を行うことは別の問題だ。
チューリヒでは実際に車両や商店が被害を受け、負傷者への救助活動まで妨害される事態となった。
スイス当局は現在、暴動に関与した人物や被害状況について調査を進めている。
社会的不満をどのように政治へ反映させるのか。そして抗議の自由と市民の安全をどう両立させるのか。
今回の事件は、欧州社会が抱える課題を改めて浮き彫りにした。
【参照資料・報道】
- チューリヒ市警察(2026年11月1日)
「第4地区での暴動に伴う警察出動」
https://www.stadt-zuerich.ch/de/aktuell/medienmitteilungen/2026/11/polizeieinsatz-wegen-ausschreitungen-im-kreis-4.html - チューリヒ州警察(2026年11月1日)
「州内での大規模な警察出動」
https://www.zh.ch/de/news-uebersicht/medienmitteilungen/2026/11/261101r_ktzh_bilanz_halloween.html - スイス公共放送 SRF(2026年11月1日)
「チューリヒとバーゼルで暴動、バリケードや車が炎上」
https://www.srf.ch/news/schweiz/ausschreitungen-in-zh-und-bs-brennende-barrikaden-und-krawall-bei-demos-in-zuerich-und-basel - バーゼル州警察(2026年11月1日)
「無許可のデモが市内交通を妨害」
https://www.bs.ch/medienmitteilungen/jsd/2026-unbewilligte-demonstration-behindert-den-verkehr-der-innenstadt - Nau.ch(2026年10月29日)
「ハロウィンに極左グループが無許可デモを呼びかけ」
https://www.nau.ch/news/schweiz/an-halloween-linksextreme-rufen-zu-unbewilligter-demo-in-zurich-auf-67195552 - スイス公共放送 SRF(2026年11月1日)
「チューリヒとバーゼルの暴動、思想と破壊行為の関係を分析」
https://www.srf.ch/news/schweiz/krawalle-in-zuerich-und-basel-die-allianz-der-ideologen-mit-den-krawallbruedern - チューリヒ市警察(2026年10月20日)
「ハルト広場の暴動で映像提供を呼びかけ」
https://www.stadt-zuerich.ch/de/aktuell/medienmitteilungen/2026/10/nach-ausschreitungen-beim-hardplatz-stadtpolizei-zuerich-suc.html
※2026年11月1日時点の警察発表および現地報道に基づく。被害額など未確定の情報は断定していない。
編集部[26/11/1]
Xより
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